2007年08月09日

Posted by art of tida
at 20:46
Comments(7)

メタボラ

「5人待ちの状態ですけど、いいですか?
でも、あと2冊入ってくる予定だから~、多少は早くなると思うけど」

へ~っ?
そんな人気本は、平良、いや宮古島市立図書館に
今だかつてなかったんじゃないか!?

仕方ないけどいいです、と返事して
そのまますっかり忘れていた本の順番がやっと回ってきて
貸し出せますと連絡がきたのがちょうど休業日の火曜。

昼休みをとるようになったおかげもあって
それから2日半で、分厚い600ページ、
一気に読み切ってしまった。

メタボラ


やんばるの漆黒の森で、
記憶をすべて失った少年と異様に能天気な宮古出身の少年が出会う、
すべてが謎だらけの出だし。

最初のうちは、この宮古少年の喋る超ベタなミャークフツ
(朝日新聞で連載されていたときに、注釈なしで読者はどうやって理解できただろう!?)や
ディテールに凝ったシチュエーションやプロフィール
(親父が建設会社で市会議員だったり、地元民なら固有名詞をすぐ連想させる)
などに魅了されてしまった。

取材力と構成力と、イマジネーションと。
やっぱり桐野夏生って人は、すごい。
サラリーマン時代に『OUT』を読んだときの衝撃を思い出した。

舞台が那覇に移ってからも、
基地問題や公共事業に頼る産業構造、
「骨を埋めるつもり」の移住ナイチャーと地元住民との温度差や軋轢、
カルト集団に傾倒したりゲストハウスに定住する住民票を持たない漂流ナイチャー、
松山歓楽街のホストやデリヘルに堕ちた若者たち・・・

美しい海や空のオブラートをひょいとめくった
「ダークサイド」の沖縄。

一方で、内地の若者たちの「搾取」の実態もリアルだ。

宮古の新聞でも毎日のように求人情報欄に掲載されているけれど、
「携帯電話の組み立て作業、
月給30万保証、寮完備、
カップル歓迎!今なら入社支度金10万円支給!!」
こんな求人広告に応じて内地に「就職」した若者たちの生活とは。

宮古・沖縄がモチーフだけに、
若者達にとっての現代社会と“自分殺し”の旅、云々とかっていう
帯の文言とは全く違う観点で読んでしまったけれど、
(帯がついてなかったから、後で書評で知った)
逆に、どっぷりそっちの世界に浸ってしまっていたので、
あっけない終わり方で物語を放り出されてしまってから、
しばらくは放心状態。
そしてぞっとする。

私のように、「美らうちなーサイド」ばかり見ている(見ていたい)島ナイチャーの
平和ボケした日常に喝を入れられたかな。

でも、もしもいつか自分が宮古を舞台に何か書くとしたら(書くの?)、
このくらいアクのあるものが書けたらズミさいが~!
とも思うのでした


それにしても、今でもわからないのが『メタボラ』ってタイトル。

いったい何だわけ?
だいっず気持ち悪。









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この記事へのコメント

興味深々の作品のようですね・・

「メタボラ」?桐野夏生!

「ゆり」さんらしい感想ですね?!
「ゆり」さん小説書いてみては?!

風人は風人の色眼鏡で、
「メタボラ」読みたくなったデス・・・

Posted by 琉球弧風来坊・風人 at 2007年08月09日 22:00

新聞にこれが連載されていたときは、翌朝の通勤時間が待ち遠しいくらい、夢中でした。
当時は、宮古青年アキンツのみゃーくふつがだいっず移染ってた。

メタボラとは、連載終了後に、同紙に桐野氏が文章を寄せていたのですが、メタボリズムからの造語だそうで、生き物が変態していくさま、都市や人間が、新しいものへ脱皮して生まれ変わるようなことをイメージしたタイトルらしいっすよ。

ゆりさんが書いている沖縄の光と影だけでなく、偽装請負とかネット集団自殺とか家族崩壊とか、日本の”いま”が本当によく取材されていて、もちろんフィクションなんだけど、ルポルタージュとしても十分読見ごたえがありましたねー。

ちなみに、いま東京の深夜にkinkiの光一がやっているドラマ「スシ王子」も宮古の青年という設定らしい。宮古大流行さいがよ。(笑)

Posted by 団長 at 2007年08月09日 23:59

だんちょー、スシ王子来ましたか!
私は先日たまたま宮古ロケの回を見て、たまげていました・・・ちなみに、スシ王子が代表してスシを握ったすし店の名前は「てぃだ鮨」・・・・

そんなことはいいとして、
メタボラ、私も読みたくなりました。
なついち、(ふるー)読むか!

Posted by あねおかみ at 2007年08月10日 02:19

★風人さん

半うちなーんちゅの風人さんの
色眼鏡で読んだ感想、
聞いてみたいです

あたしの小説?
まだまだ先だなー

★団長

な~る。。。団長の流暢なミャークフツは
この連載小説仕込だったのかぁ?

メタボラの意味、どうもありがとうございます。

名前をもらったギンジが出来上がっていく過程
みたいなことだったのか。

中身は柔らかいけど、思いっきり硬派なんだ

実は、
名前こそ変えなかったけれど、
宮古に移ったばかりの自分を
ちょびっと重ねて読んでいたさー


★あねおかみ

スシ王子!
そういやしばらく前に菊之露の近所で撮影してたって、
ミーハーな連れが興奮してましたよ。

宮古ロケの回だけでも見てみたいなぁ
どんなかよー?

DVDレンタル、待つとするか。

Posted by ゆり@宮古島 at 2007年08月10日 10:34

いかん、いかん
まだ読んでないからこのブログもスルーして
コメントしましたよ~!

なんか色々と語ってますねえ。。。

Posted by まさふぃ~ at 2007年08月10日 23:44

わたしは8月19日に本物の渡辺淳一に会います。鈍感力その本の説明があるそうです。
古本屋に行ってその作家の「流氷への旅」
を一気に読みました。
なんかよかったよ。
ひさしぶりに純粋に美しいlove sstory
読みました。雪の描写もすばらしかった。
彼はエロばかり書くようだけど、昔の作品は
いいものです。大好きな作家です。
goodoです。

Posted by き at 2007年08月10日 23:48

★まさふぃ~さん

なんと今日から沖縄入り、
だったんですね!?

落ち着いて読書する時間て
なかなか見つかりませんね^^

★き さん

そうなんですよね、渡辺淳一氏というと、
やはり『失楽園』のイメージ
(実際、私もその前後の時期の作品にしか触れていないんです)

ですが、最近の『鈍感力』は、
ちょっと響いていたんです。
(いかにも自分の能力に名前をつけてもらったような気がして・・・^^;)
今度は、この本を借りてみます!

Posted by ゆり@宮古島ゆり@宮古島 at 2007年08月11日 18:35
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